【解決事例】前妻の子がいる・子なし夫婦の遺言|遺留分の不安を付言事項と遺言執行者で解決した事例【宇部市の行政書士】

アイキャッチ画像_【解決事例】前妻の子がいる・子なし夫婦の遺言

「子どもはいません。夫には前妻との間に子どもがいますが、長年疎遠で、今どこに住んでいるかも分かりません」

宇部市にお住まいの50代のご夫婦から、このようなご相談をいただきました。

お話をお伺いする中で、奥様が「夫の先妻との子とは、関わらないようにしたい」という切実な思いを抱えていらっしゃることが伝わってきました。長年にわたり抱えてこられたお気持ちだったのだと思います。

一方でご主人は、「妻に苦労をかけたくない。全財産を妻に遺したい」というお気持ちをお持ちでしたが、同時に「前妻の子から、後で何か言われるのではないか」という不安も抱えていらっしゃいました。

この記事では、実際にご相談いただいた事例(内容は特定を避けるため一部変更しています)をもとに、子どもがいないご夫婦で、前妻の子がいる場合の遺言対策について、宇部市の行政書士が解説します。

目次

ご相談内容

  • お子様はいらっしゃいません
  • ご主人には離婚歴があり、先妻との間にお子様が1人いらっしゃいます
  • そのお子様とは長年疎遠で、現在の住所も分からない状態でした
  • 奥様は、「夫の先妻との子とは関わらないようにしたい」という切実な思いをお持ちでした
  • ご主人は「自分が亡くなった後、妻に苦労をかけたくない。財産はすべて妻に遺したい」と強く希望されていました

奥様のお気持ちの背景には、長年にわたる複雑な感情があったことがうかがえました。そうした奥様の思いを踏まえ、ご主人には次のような不安がありました。

「全財産を妻に、という遺言を書いておけば、それで大丈夫なのでしょうか。前妻との子から、後で何か言われたりしないでしょうか。それに、万が一のときに妻が前妻の子とやり取りをしなければならないような事態は、絶対に避けたいのです」

このケースの法的な問題点

このケースには、見落とされがちな重要なポイントがあります。

「全財産を妻に」という遺言だけでは、実は不十分

お子様がいないご夫婦の場合、ご主人が亡くなると、法定相続人は「妻」と「ご主人の血族(親・兄弟姉妹・その子)」になります。前妻との間のお子様がいる場合、そのお子様も法定相続人です。

遺言書で「全財産を妻に相続させる」と書いておけば、遺産分割協議は不要になり、前妻の子の同意なしで名義変更等の手続きが可能になります。

しかし、これで問題がすべて解決するわけではありません。前妻の子には「遺留分」という、遺言によっても奪うことのできない最低限の相続の権利が残ります。

つまり、遺言を作成した後、前妻の子から「遺留分侵害額請求」をされる可能性が残るのです。

遺留分侵害額請求権には時効があります(相続開始と遺留分侵害を知った時から1年、相続開始から10年)。ただし、疎遠で連絡が取れない相手が「いつ知るか」は予測できず、長期間にわたって請求の可能性が残る点に注意が必要です。

当事務所がご提案した解決策

このケースでは、遺留分を法的に消すことはできません。そこで当事務所では、以下の3つを組み合わせた解決策をご提案しました。

① 公正証書遺言で「全財産を妻に」を確実に

まず土台として、公正証書遺言で「全財産を妻に相続させる」旨を明確に定めました。公正証書遺言は、公証人が関与するため、後から「無効」と主張されるリスクが低く、最も確実な遺言の形式です。

② 付言事項で、感謝の言葉と想いを伝える

付言事項とは、遺言書の最後に記す、法的な効力を持たない「メッセージ」の部分です。

今回のケースでは、付言事項に以下の内容を盛り込みました。

  • 長年疎遠であったことへの率直な思い
  • お子様への感謝の言葉
  • 「全財産を妻に相続させる」と決めた理由(妻の今後の生活を案じてのことであり、お子様を軽んじているわけではないこと)
  • 遺留分侵害額請求について、権利行使は妨げない旨

付言事項に法的効力はありません。しかし、「なぜこの内容の遺言にしたのか」という背景や気持ちが伝わることで、遺された方の心情に働きかけ、実際の紛争を防ぐ効果が期待できます。感情的な行き違いから請求に至るケースは多く、丁寧な言葉を残すことには大きな意味があります。

③ 行政書士が遺言執行者に就任

最後に、当社行政書士法人が遺言執行者に就任することをご提案しました。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための手続きを行う人です。今回のケースでは、以下の理由から特に重要でした。

  • 前妻の子への連絡が必要になった場合、奥様ご本人ではなく、行政書士(遺言執行者)が窓口になれる
  • 「関わりを持ちたくない」という奥様の切実な思いに応え、直接やり取りする精神的な負担を避けられる
  • 戸籍収集や各種手続きを専門家が代行できる

奥様の「関わりたくない」という思い、そしてご主人の「妻に負担をかけたくない」という思い——このお二人の願いを、実務面から支える重要な役割です。

当事務所が実施したサポート内容

STEP1 ヒアリング・文案作成

ご夫婦それぞれのご意向を丁寧にお伺いし、公正証書遺言の文案、および付言事項の文案を作成しました。

STEP2 公証人との調整

遺言の内容について、公証役場の公証人と事前に内容をすり合わせました。

STEP3 公証役場の日程予約

ご夫婦のご都合に合わせて、公証役場での作成日程を調整・予約しました。

STEP4 証人2名の立ち会い手配

公正証書遺言の作成には証人2名の立ち会いが必要です。当事務所のスタッフが証人を務め、当日同行しました。

STEP5 遺言執行者への就任

当社行政書士法人が遺言執行者に就任し、将来の手続きに備えました。

STEP6 遺言書の保管と継続的なご連絡

作成後は、遺言書の副本を当事務所で保管するとともに、毎年ご連絡を差し上げ、内容に変更がないかを確認しています。

【ポイント】
遺言は一度作成したら終わりではありません。ご家族の状況や財産内容は年月とともに変化するため、定期的な見直しが大切です。当事務所では、作成後も継続してお付き合いさせていただいています。

このケースから学べること

今回のケースは特殊に見えるかもしれませんが、実は同じような状況の方が少なくありません。次のいずれかに当てはまる方は、特に参考にしていただける事例です。

  • 子どもがいないご夫婦
  • 再婚しており、前の配偶者との間に子どもがいる
  • 疎遠になっている相続人がいる
  • 「全財産を配偶者に」と考えているが、それだけで大丈夫か不安
  • 配偶者に、疎遠な相続人とのやり取りをさせたくない

このようなケースでは、「全財産を配偶者に」という一文だけの遺言では、想定しきれないリスクが残ります。遺留分への理解、付言事項による想いの伝達、そして遺言執行者の指定という3つを組み合わせることで、より安心できる備えになります。

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今回は「生前に遺言で備えたケース」でしたが、事前に備えがないまま相続が発生し、疎遠な相続人と向き合うことになった事例もあります。あわせてご覧いただくと、備えの重要性がより実感いただけます。

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この記事を書いた人

やまぐち相続コンシェルジュ 代表
(BIZARQ行政書士法人の代表行政書士)
30代で双子の兄(社会保険労務士)とともに士業事務所を開業。4年目で法人化とともに、弁護士・税理士・会計士・社労士・行政書士の総合士業グループのBIZARQグループへ参画。個人向けの遺言・相続手続きから法人向けの許認可申請手続きまで幅広く扱う。

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