【解決事例】姉の相続で高齢の父が相続放棄|親族と関わらず円満に手続きを終えたケース【宇部市の行政書士】

「姉が亡くなりました。相続のことで、できれば関わりたくない父の親族がいるのですが、揉めずに手続きを終える方法はないでしょうか」

宇部市にお住まいの弟様から、このようなご相談をいただきました。葬儀を担当された葬儀社様からのご紹介でのお問い合わせでした。

お話をお伺いすると、単なる手続きの問題だけでなく、これまでの父の親族との複雑なご事情や、高齢のお父様のこと、そして将来への不安など、いくつもの心配が重なっている状況でした。

この記事では、実際にご相談いただいた事例(内容は特定を避けるため一部変更しています)をもとに、相続放棄を活用して円満に相続手続きを終えたケースを、宇部市の行政書士が解説します。

目次

ご相談内容

ご相談者様は、宇部市にお住まいの弟様でした。

  • お姉様が亡くなられた(被相続人)
  • お母様はすでに他界されており、相続人は高齢のお父様お一人
  • 弟様とお父様は同居されている
  • ご自宅の不動産は、亡くなったお姉様の名義だった
  • 相続財産は、ご自宅の不動産と、お姉様名義の預貯金
  • これまで父の親族から嫌がらせを受けてきた経緯があった

弟様は、次の3つの不安を抱えていらっしゃいました。

【弟様が抱えていた3つの不安】
1. 関わりたくない父の親族と接触せず、円満に手続きを終えたい
2. 父は高齢で耳も遠く、相続手続きにきちんと参加できるのか不安
3. 父も高齢のため、相続してもすぐにまた相続(二次相続)が発生するのではないか

このケースの法的な問題点

まず、このケースで「誰が相続人になるのか」を整理します。

相続人はお父様お一人

お姉様には配偶者もお子様もいらっしゃいませんでした。この場合、法定相続人は以下の順序で決まります。第1順位:子(いない)、第2順位:親(お母様は他界、お父様が存命)。したがって、今回の相続人は「お父様お一人」でした。

相続人がお一人であるため、遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」は、そもそも必要ありません。一見すると、シンプルに手続きが進められそうに見えます。しかし、このまま「お父様が相続する」という前提で進めると、3つの問題が生じることが分かりました。

問題①:二次相続がすぐに発生するリスク

お父様がお姉様の財産をそのまま相続した場合、お父様もご高齢であることから、近い将来にお父様の相続(二次相続)が発生し、再び相続手続きが必要になる可能性が高い状況でした。同じような手続きを短期間に二度繰り返すことは、ご家族にとって大きな負担です。

問題②:父が相続すると、父の親族との関わりが生じうる

弟様が最も避けたかったのが、関わりたくない父の親族との接触でした。お父様が相続し、その後お父様の二次相続が発生すると、お父様の相続の場面で父の親族が関与してくる可能性が出てきます。父が相続人であり続けることは、将来的に父の親族との関わりを生む火種を残すことにつながりかねませんでした。

問題③:高齢のお父様が手続きの負担に耐えられるか

お父様が相続する場合、預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きには、お父様ご本人の関与が必要になります。しかし、お父様は高齢で耳も遠く、金融機関や役所とのやり取りに大きな負担がかかることが予想されました。

当事務所がご提案した解決策

これら3つの問題を一度に解決する方法として、当事務所では「お父様が相続放棄をする」という方法をご提案しました。

① なぜ「お父様の相続放棄」が最適だったのか

相続放棄というと「借金を相続しないための手続き」というイメージが強いかもしれません。しかし相続放棄には、もう一つの活用方法があります。それは「相続人を、最も適した人に切り替える」という使い方です。

お父様が相続放棄をすると、法律上「お父様は初めから相続人でなかった」ものとして扱われます。その結果、次順位である兄弟姉妹、つまり弟様が相続人になります。今回はお父様お一人が相続人だったため、相続放棄により、相続人が弟様お一人へと切り替わりました。これにより、3つの問題が同時に解決しました。

問題相続放棄による解決
二次相続のリスク財産が父を経由せず弟様に渡るため、父の二次相続の対象にならない
父の親族との関わり父が相続人から外れることで、将来父の親族が関与する余地をなくせる
高齢の父の手続き負担相続人が弟様になり、父は手続きから外れる

【ポイント】
相続放棄は「マイナスの財産(借金)を引き継がないため」だけでなく、「二次相続を見据えて、財産を渡す相手を最適な世代・人に切り替えるため」にも活用できます。ご家族の状況に応じて、誰が相続するのが最も円満かを考えることが大切です。

② もともと協議は不要、だからこそ「誰が相続人か」が重要だった

今回はお父様お一人が相続人だったため、相続放棄の前後を通じて、遺産分割協議は一度も必要ありませんでした。誰かと話し合ったり、書類に署名・押印をもらったりする必要はありません。

だからこそ重要だったのが、「その唯一の相続人を、父にするか、弟様にするか」という選択でした。相続放棄によって相続人を弟様お一人に定めたことで、父の親族が関与する余地をなくし、かつ二次相続の負担も回避したうえで、スムーズに手続きを完結させることができました。

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当事務所が実施したサポート内容

STEP1 お父様の相続放棄(提携司法書士と連携)

相続放棄の申述は家庭裁判所への手続きであり、司法書士・弁護士の業務範囲です。当事務所では、提携する司法書士と連携し、お父様の相続放棄の手続きをサポートしました。

STEP2 戸籍収集

今回は兄弟姉妹による相続(お姉様の相続を弟様が受ける形)となったため、必要な戸籍の範囲が広く、収集に手間がかかりました。被相続人であるお姉様の出生から死亡までの戸籍に加え、ご両親の戸籍なども必要となり、当事務所がすべて代行して収集しました。

STEP3 相続財産調査

ご自宅不動産の評価やお姉様名義の預貯金について、財産の内容を正確に調査しました。

STEP4 預貯金の解約手続き

お姉様名義の預貯金口座について、金融機関での解約手続きを代行しました。

【兄弟姉妹の相続は書類が多くなります】
兄弟姉妹が相続人になる場合、通常の親子間の相続よりも収集すべき戸籍の範囲が大きく広がります。ご自身で集めるのは大変な作業になるため、専門家への依頼をおすすめします。

その後:相続の完了から、次の備えへ

相続放棄という方法により、弟様は関わりたくない父の親族と接触することなく、また高齢のお父様に負担をかけることもなく、さらに二次相続の心配も回避したうえで、円満に相続手続きを終えることができました。

そして、手続きが一段落した後、当事務所から弟様に、もう一つのご提案をしました。それは「身元保証」についてです。今回の相続で、弟様はご自身が将来「おひとりさま」になる可能性に改めて気づかれました。頼れるご家族が少ない中で、ご自身が高齢になったとき、入院や施設入所の保証人、亡くなった後の手続きを誰が担うのか——という新たな課題です。

弟様は「たしかに、今度は自分のことを考えなければいけませんね。前向きに検討します」とおっしゃっていました。相続は、亡くなった方の手続きであると同時に、遺されたご自身の将来を考えるきっかけでもあります。当事務所では、相続手続きから、その後の終活・身元保証まで、切れ目なくサポートしています。

▽併せてお読みください

このケースから学べること

今回のケースは、次のいずれかに当てはまる方に、特に参考にしていただける事例です。

  • 兄弟姉妹が亡くなり、高齢の親が相続人になる
  • 関わりたくない親族がおり、接触せずに手続きを終えたい
  • 高齢の相続人が、手続きに参加できるか不安
  • 相続してもすぐに次の相続(二次相続)が起きそうで心配
  • 相続人が誰になるのか、そもそも分からない

相続放棄は、使い方次第で「円満な相続」を実現する強力な手段になります。ただし、相続放棄には「相続開始を知ってから3か月以内」という期限があり、一度行うと撤回できません。また、放棄によって次に誰が相続人になるのかを正確に見極める必要があります。自己判断で進める前に、まずは専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

やまぐち相続コンシェルジュ 代表
(BIZARQ行政書士法人の代表行政書士)
30代で双子の兄(社会保険労務士)とともに士業事務所を開業。4年目で法人化とともに、弁護士・税理士・会計士・社労士・行政書士の総合士業グループのBIZARQグループへ参画。個人向けの遺言・相続手続きから法人向けの許認可申請手続きまで幅広く扱う。

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